千歳飴の意味・由来

千歳飴が誕生したのは江戸時代のことです。

 

千歳飴の「千歳」には「長生き」という意味があり、飴の細く長い形と紅白の色は「千歳」「ちとせ」「せんさい」を表しています。

千歳飴は米と麦芽を糖化させてつくる紅白の棒飴で、
「せんざい飴」「千年(せんねん)飴」「寿命飴」とも言い、新生児や「七五三」の子どもの宮参りに祝い菓子として商われました。

千歳飴は「千年も寿命を保つ飴」という意味で、現在は「ちとせあめ」と呼んでいますが、
当時は、「せんねんあめ」「せんざいあめ」と呼ばれていました。

そんな千歳飴の発祥については、いくつかの説があります。

大坂の飴売りを発祥とする説

一つは、元和元(1615)年、大坂の平野甚左衛門が、飴の販路を拡大するために江戸に出て、
浅草寺の境内で飴を売りはじめたのが始まりという説です。
この時、千歳飴は「せんざいあめ」と読まれており、その飴を食べれば千歳まで生きられるとして人気を集めました。
長寿の飴として有名になったこの飴は、のちに現在と同じ「ちとせあめ」と呼ばれるようになりました。

浅草の七兵衛を発祥とする説

元禄・宝永年間(1704~1711年)に、江戸・浅草の七兵衛(しちびょうえ)という飴売りが、
紅白の飴を「千年飴」として売り出したのを始まりとする説もあります。
千年という言葉が長寿をイメージさせる縁起の良いものであったため、
「長生きできる」「健康でいられる」というご利益があると話題になりました

神田明神を発祥とする説

千歳飴は、神田明神の社頭で売られていた「祝い飴」が発祥だとも言われています。
神田明神では、今も昔と変わらず、「七五三」のお参りにきた子供たちに千歳飴が授与されています。


歌川広重(2代)『江戸名勝図会 神田明神』 国立国会図書館デジタルコレクション

 

千歳飴の形にも意味がある

千歳飴は、精製した白砂糖を練り固めて作った太白飴(たいはくあめ)を細長くし、紅白それぞれの色で染めてあります。
この長い飴を食べることで「細く長く」、そして「粘り強く」いつまでも元気で健やかに成長しますようにと
祈願する意味があるのです。
形は、直径1.5cm、長さ1m以内と決まっています。

細長い形で1本丸ごとは食べにくい千歳飴ですが、「長さに意味があるので食べる時に折ってはいけない」という説もあります。
しかし、明確に決まっているわけではなく、むしろ縁起物なので食べやすく切って近所におすそ分けすることも多かったようです。

 

千歳飴の袋にも意味がある

「鶴」「亀」「松竹梅」「高砂の尉(じょう)と姥(うば)」といった縁起物の絵柄が、色鮮やかに、そして華やかに描かれています。
縁起のよい図柄が描かれた袋に入れられた千歳飴には、
「子どもが元気によく成長するように、そして長生きするように」という親の願いが込められているのです。

鶴は、不老長寿を象徴する吉祥の鳥で、「鶴は千年」と言われ、長寿の象徴です。
また、共鳴した鳴き声が遠くまで届くことから、天に届く、転じて「天上界に通じる鳥」といわれていました。
室町時代、長寿を願って千羽鶴を折る習慣が始まり、
江戸時代には、病気の回復祈願やその他の願いを込めて折られるようになったと考えられています。

亀は、仙人が住む不老長寿の地・蓬莱山(ほうらいさん)の使いです。「亀は万年」と言われ、知恵と長寿を象徴しています。
甲羅が硬いことから、インドでは世界を支える不動の象徴とされています。

松竹梅

由来は「歳寒三友(さいかんさんゆう)」という松、竹、梅を指す中国の四字熟語です。
冬の間も、松と竹は緑を保ち、梅は花が開くことから「寒い冬という季節に友とすべき3つのもの」という意味で、
冬の間の画題とされました。

この3つの画題が日本に伝わったのは平安時代です。その頃から、常緑樹の松は「節操・長寿・不老不死」、
多くの根を張り次々と新芽を出す竹は「子孫繁栄」、春になると真っ先に花を咲かす梅は「繁栄・長寿」の
象徴と考えられるようになりました。

 

子どもの成長を願う親の気持ちは、昔も今も変わらない

飴の中で、最も長い歴史をもつと言われる千歳飴。
時代は目まぐるしく変化していますが、千歳飴は、昔のままの形で、現在も「七五三」の子どもたちが手にしています。
千歳飴には、時を越えて、子どもの成長を願う親の思いが受け継がれているのです。

 

意外と知られていない千歳飴の食べ方

千歳飴は、その年齢に合わせた本数を食べるのが正しい食べ方のようです。
例えば、3歳ならば3本です。袋には一律の本数が入っているため、この風習はあまり知られていないかもしれません。

千歳飴は長く作られているのは、長生きすることを願っているからです。
そのため、千歳飴を折って食べることは絶対に避けてください。
また、歩きながら食べると危険なので、大人が一緒に座って見守るようにしてください。

 

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